過熱水蒸気
オーブンレンジER-XD90

中台 龍太

外装を一新した、過熱水蒸気オーブンレンジの中級機モデルです。30~40代をターゲットにその琴線に触れるテイストと分かりやすい操作感、インテリアトレンドにマッチする先進感をテーマにデザインしました。

徹底したユーザー調査で方向性を見いだす

インテリアにマッチする、住空間にマッチするとはどういうことなのか。国内、海外で事情は違いますし、一般住宅とホテルや高級デザイナーズマンションは同列にはできません。インテリアスタイルの変化を感じとるべく、ユーザーインタビューを徹底して行いました。そこで浮かび上がったのが、家電を部屋になじませたい=生活感を消したいというニーズであり、そのために家電はなるべく隠したい、存在感を消したいということでした。

WORKS 過熱水蒸気オーブンレンジ - インタビュー風景

キッチン空間で調和する質感

私たちとしては、存在感を抑えることでモノとしての価値を下げることは避けなくてはなりません。モノとしての価値は素材で表現できる部分ですが、素材が限定される普及機の場合、安っぽさにつながってしまいます。インテリアにマッチさせることとモノの価値観とのバランスをとることに気を遣いました。キッチン空間との調和性を考えた時、従来の一番の問題点は全体が光沢だということです。キッチンインテリアのトレンドであるマット素材で表現することにしました。

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オーディオ機器を思わせる高質感

私自身、白物家電のデザインに携わる以前にオーディオ機器やインテリア・住宅関連のメーカーに在籍していました。黒物と呼ばれる業界での経験を活かして、その質感を白物家電に応用することでより家電の質感を高められると考えています。

時間を設定する操作は従来のタッチキーからダイヤル操作へと変更しました。ダイヤルの質感は、オーディオのメインアンプのボリュームダイヤルを参考に、アルミ削り出しのイメージとしました。光沢のクロームメッキではなく、本体色にマッチした暗いメッキによって高質感を表現しています。手に触れて回転する部分はすり鉢状の下に埋め込むスタイルにして、ダイヤルの凸起部分が一段下がった高さになるようにしています。そうすることで、意図せずに触れてしまうことがないよう使い勝手にも配慮しています。

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細かな工夫で質感を高めた操作パネルの仕上げ

従来機種では本体下部に液晶と操作キーを配置するレイアウトとなっています。ワイド感が感じられ評価も高いのですが、目線が下になる、かがむ必要があるなど、視認性や操作性では劣ります。また、ワイドで広いハンドルは重厚感・高級感を演出できますが、キーを操作するときに、ハンドルがかぶさって見えにくくなります。下部に配置した液晶、操作キーへの影響を最小限に抑えるため、ハンドル形状は左右ストレートではなく途中から滑らかに傾斜していく形状とし、ワイド感と視認性を両立させました。

操作感の良さと高級感を出すためのキーの仕上げを考えていく上で、従来の質感・色が一体となったシートに安っぽさが感じられました。今回、キーは光沢で、全体のベースはマットで、と質感を分けることで独立したキーのように見える工夫を行いました。また、放射状に反射するスピン加工で処理し質感を高めることで、ワンランクアップした表現が出来たと思います。中級機種でありながら、オーディオのデザインに見られる質感を感じてもらえたら嬉しいですね。

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DESIGNER担当デザイナー

中台 龍太

音響機器メーカー、住宅設備機器メーカー等のデザイナーを経て、東芝ライフスタイルでは洗濯機やオーブンレンジのプロダクトデザインを担当しています。これまでの経験を活かし、操作性を高める意識を持ちながら時代にマッチしたインテリアに調和するデザイン提案を心がけています。休日は建造物を見て歩くのが好きで、特に1960年代のものは多様化が求められた時代に新しい領域のものを取り入れた建築が多く、そのチャレンジが建築にも見てとれるのが非常に面白く、家電をデザインする上で刺激にもなっています。

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