TECHNOLOGY
DEVELOPMENT
技術開発
オーブン加熱技術
オーブン調理を
簡単操作で
おいしく仕上げる

毎日の料理やパン・お菓子作りなどに欠かせないオーブンレンジ。手軽に本格的なオーブン調理を可能にする、さまざまな技術の開発・研究を行っています。
おいしさを実現する技術
「 業界最高*350℃※1の高火力 」*2025年3月1日現在、国内家庭用100Vオーブンレンジにおいて。
お客様の声に応えた、
当社が誇る3つの強み
当社のオーブンレンジには、伝統的に高火力への強いこだわりがあります。2002年からは高火力・遠赤外線での加熱を象徴する “石窯” を謳い、2009年には加熱スピードを強化し、庫内形状を熱が回りやすいドーム型にした“石窯ドーム”へと発展させました。
石窯ドームの開発は2008年に実施したお客様へのリサーチがベースになっています。クッキングスクールの先生方にヒアリングしたところ、オーブンレンジに対して次の3つの強い要望が挙げられました。
(1)予熱が早いこと、(2)加熱が強いこと、(3)加熱ムラがないこと
プロ用機材ではなく、家庭用のオーブンレンジを使って高温で素材の表面を素早く焼き上げ、肉のうまみを閉じ込めたり、パンをフワッと仕上げたりできるかという点が重視されていました。そこで、高火力・予熱時間短縮・加熱ムラ低減を実現できるオーブンレンジの開発を目指すことにしました。

当時の家庭用オーブンレンジの最高温度が300℃だった中、当社は350℃の高火力を目指しました。同時に、200℃までの予熱時間を10分から5分に短縮することに決めました。この2つの目標を達成するために、まず高温の熱風を送り出せるように高出力の熱風ユニットを開発。そして、従来は平面だった庫内の天井をドーム型形状に変更し、熱風が左右の端まで行き渡るように改良を加えました。また、角皿の左右・前後にスリットを設け、熱風を通すことでダイナミックな熱対流を作り、庫内全体の加熱を効率化。庫内の壁には遠赤外線を放射する素材を使用し、食材の内部まで効率的に加熱できるようにしました。これにより、予熱速度を上げると同時に加熱ムラの低減を実現したのです。
庫内を350℃もの高温にするためには、庫外へ熱を逃がさない断熱技術が不可欠です。また熱の影響を受けやすい電子部品を、コンパクトさが要求される本体のどこに配置し、いかに断熱するかも技術的に大きな課題でした。長年培ってきた高火力技術と柔軟な発想を組み合わせることで、「予熱が早い」「加熱が強い」「加熱ムラがない」という3つの課題を克服し、当社の強みとすることができました。



350℃石窯ドームラウンド石窯ドーム構造により、熱風の対流が良く、ムラを抑えておいしく焼き上げます。
加熱温度も時間も
おまかせの画期的機能
当社のオーブン機能をもっと手軽に活用していただきたいという思いから搭載した「石窯おまかせ焼き」も画期的です。使い方は簡単で、食材を並べてメインの食材を選び、スタートボタンを押すだけ。温度と時間を自動調整して焼き上げてくれます。この機能を可能にしたのが高度なセンシング技術です。オーブン内の温度上昇を詳細に検知することで、食材の分量などを推測し、最適な加熱を行うようにプログラミングしています。オーブン調理でお客様が悩まれがちな「何℃で何分」をまかせられるので、料理の幅を格段に広げる機能となりました。


250℃上下ヒーター式オーブンER-D100Aと350℃熱風コンベクション式オーブンER-D7000Aでパンの焼き上がりを比較。断面の高さはそれぞれ約34mm、約40mmと、約18%の差が出ました。350℃の高火力によりパンはふっくら焼き上がることがわかります。
- *市販のクロワッサン生地を焼成。5分間予熱した後、200℃15分で焼成。(同じ加熱時間で比較)
- *当社調べ。比較試験のため、当社推奨の焼き方とは異なります。
※1.350℃での運転時間は約5分です。その後は自動的に230℃に切り換わります。350℃は一般社団法人日本電機工業会(JEMA)「表示に関する自主基準(平成19年6月19日制定)」に準ずる。
※2.250℃での運転時間は約5分です。その後は自動的に200℃に切り換わります。
設置スペースの削減を実現する技術
「 省スペース
(奥行39.9cm※3) 」
大容量をキープしながら収納棚に
すっきり収まるコンパクト設計
オーブンレンジの製品開発で重要となる技術がコンパクト化です。オーブンレンジは既製の収納棚やキッチンボードに置かれることが多い傾向があるため、外寸はできる限り小さい製品が好まれます。そこで、庫内容量を確保しながらコンパクトな設計、特に奥行にこだわりました。横幅寸法を従来同等にキープしながら、奥行を従来の45.0cmから業界最小*となる39.9cmへ薄型化。これにより、一般的な奥行45.0cmの収納棚に設置しても、ハンドルが飛び出さずにすっきり収まります。さらに、庫内容積率を12%向上させ庫内容量30Lを実現しています。
*2025年3月1日現在、国内家庭用100Vオーブンレンジ総庫内容量30L以上において。(ER-D7000B/D5000B/D3000B/D100Bのみ)

薄型化を実現した最大の技術的なポイントは、熱風ファンの駆動方式の変更です。従来は本体背面にあった熱風モータを本体底部へ移動し、熱風ファンをベルト駆動化。奥行を5.1cm削減しました。ベルト駆動の採用で課題となったのは、駆動機構の耐熱性です。熱風モータを低温域に配置したうえで、耐熱性シリコーンゴムベルトも熱の影響を極力受けないように考慮しました。当初はベルトが熱によりわずかに伸びてしまい、振動が発生していました。各パーツの位置とベルトの長さ・張力に微妙な調整を施しながら、薄幅化と効率的な駆動、振動・騒音の防止などすべての条件を満たす最適策を模索しました。さらに、熱風ファンとファン駆動機構をユニット化したことも大きな変更点です。従来は板金3部品で構成されていた熱風ファンを高温に耐える金属ファン1部品に簡素化し、振動と騒音を抑制しました。

庫内容量を確保するために、オーブン枠の上部と側部、扉側の枠も薄肉化が必要となりました。扉側の枠には「チョーク構造」と呼ばれる仕組みがあり、庫内からの電波(マイクロ波)が外に漏れるのを防ぐ役割を果たしています。チョーク構造は扉の枠内で電波を反射させて減衰させるものでコの字型の凹凸を持つ特殊な構造です。枠幅の変更により電波漏れに影響するため、この構造を再設計する必要がありました。水漏れと違い電波はどこから漏れているか特定できないため、再設計にあたっては、薄肉化と同時にチョーク構造に0.1mm単位の変更を加えながら3Dモデルの電波漏れ防止のシミュレーション分析を行いました。40種もの候補から最適値を見極め、最終的には実機試作評価を行い、薄肉化を実現したのです。
さらに、扉内表示基板ユニットの耐熱設計も見直しました。断熱空気層を多層設計にすることで、電装部品の温度上昇を抑制し、扉の厚みも薄くすることに成功しました。


国内家庭用100Vオーブンレンジ総庫内容量30L以上において、業界最小*の奥行39.9cmの薄型コンパクト化を実現。ハンドルを含めても奥行44.6cmで、奥行45.0cmの収納棚に収まる。
- *2025年3月1日現在、国内家庭用100Vオーブンレンジ総庫内容量30L以上において。
(ER-D7000B/D5000B/D3000B/D100Bのみ)
※3.本体奥行にハンドルは含みません。ハンドルを含む奥行は、44.6cm。
使いやすさを実現
「 カラータッチ液晶 」
スワイプ操作の微妙なチューニングにも妥協しない
操作パネルには、5インチカラータッチ液晶を採用しました。高精細な大画面を利用した豊かな表現が可能になり、使い方のガイドやレシピなど提供できる情報量が格段に増加しました。仕様の自由度を生かしてお客様にどこまで使いこなしていただくか、ストレスのない直感的な操作の見極めが苦労したポイントです。プログラム構築後は何万通りにも及ぶ操作パターンの検証を行いました。
また、業界初となるスワイプ操作も導入し、より快適な使用感を目指しました。スマートフォンに慣れたお客様に違和感なくスワイプ操作していただくために重要となるのが、タッチ反応の速度や動きです。その微妙なチューニングも多大な条件から最適値を見出しました。オーブンレンジのポテンシャルを生かす快適なカラータッチ液晶になったと考えています。

お手入れのしやすさを実現
「 とれちゃうコート/
手間なしお手入れ 」
汚れが付着してもさっと拭き取れる特殊コーティング

オーブンレンジの角皿には肉汁がこびりついたり、パン生地がくっついたりしやすく、お手入れが大変です。お客様の声でもお手入れの手間を減らしたいというご要望が多くありました。その手間を軽減するために、課題を根本から見つめ直しました。そもそも角皿にこびりつく汚れとは、塗料で構成されるコーティング層の上に付着した固形物です。それが塗料の粒子の隙間に入り込むために、拭いてもなかなか取れない状態になっています。
そこで、セラミックコーティング「とれちゃうコート」を開発。汚れよりも小さい微細な粒子で構成される塗料を使い、粒子の隙間に汚れを入り込ませないようにしました。試行錯誤を重ね汚れを付着させない塗料を作り出した後も、品質を保証するための実験には苦労しました。塗料コーティングを施す角皿は、350℃もの高温と使用後の自然冷却が繰り返される特殊な環境にさらされるため、物性が変化しないかを確認する必要があったのです。
さまざまな検証を経て完成した「とれちゃうコート」は、パン生地を角皿に直接置いて焼いてもパンの底面がくっついて剥がれてしまうことがありません。クッキングシートが不要になる点も利便性の向上と環境負荷低減につながっています。
「とれちゃうコート」は庫内にも採用されているので、油分を多く含んだ汚れが付着しても、簡単に拭き取ることができます。庫内はヒーターの露出をなくした凹凸のないフラットな造りで、さっと拭きやすい構造にしました。さらに、スチームで汚れを浮かせてより落としやすくする「手間なしお手入れコース」も搭載しています。

「とれちゃうコート」非採用機種と採用機種で、パンを焼いた後の角皿を比較。非採用機種ではパンの底面がこびりついたが、採用機種ではパンの付着は見られませんでした。
※CG画像、イラストは全てイメージです。
開発者メッセージ

