TECHNOLOGY
DEVELOPMENT
技術開発

毎日手間なく
おいしい
ごはんを
炊き上げる

イメージ写真

ごはんを毎日おいしく召し上がっていただくために、おいしさを向上する技術はもちろん、使いやすさも追求し、さまざまな技術の開発・研究を行っています。

おいしさを向上する技術
「 水硬度炊き分け/
真空ひたし 」

内釜内を真空にして
吸水させる独自技術

お米の吸水イメージ

炊飯には水が不可欠ですが、水道水は地域によって硬度に差があり、硬度の違いが炊き上がりに影響を与えることは案外知られていません。都道府県別の水道水の平均硬度を見ると、最も低い地域は23mg/L、最も高い地域は81mg/Lと、3倍以上の違いがあります。硬度が高い水ほどカルシウムなどが多く含まれている傾向があり、カルシウムがお米の吸水を阻害してしまうため、粘りが弱く、パサパサしたかたいごはんになりがちです。しかし、硬度が高い水でも吸水や加熱方法を工夫することで、おいしく炊き上げることは可能です。

お米の吸水イメージ

当社は独自の真空ポンプによって炊飯器の内釜内を真空にし、圧力差でお米に吸水させる技術「真空ひたし」を開発。お米の空気を抜いて水を芯まで浸み込ませ、お米の中央部分まで高温で加熱できるようにしました。これにより、お米の主成分であるでんぷん質が水と熱の力でやわらかく粘りのある状態に変化するα化が促進され、ふっくらと甘みの強いごはんに炊き上がります。

*各都道府県の平均硬度は、公益社団法人 日本水道協会の水道水質データベース「給水栓水の水質R1(2019年)」をもとに、当社計算により算出しています。

真空イメージ インタビューイメージ

ひたし方と炊き方の
膨大なパターンを検証

ごはんの甘みは還元糖量で測定できます。2020年に発売した機種で硬度70mg/Lの水を使って炊いた場合、ごはん100g当たりの還元糖量は80mg。一方、同様の水を使いながら「水硬度炊き分け/真空ひたし」機能が付いた機種で硬度設定して炊くと、還元糖量は98mgにアップしました。

還元糖量比較イメージ
水道水の平均硬度を示した液晶画面

お米にどれくらい吸水させればよいか、どのような加熱をすればよいか、最適策を見つけるまでは試行錯誤の連続でした。まず、全国の水道水を想定して、純水に天然の超硬水を混ぜ、さまざまな硬度の水を作るところから実験を始めました。水の硬度、ひたし時間、加熱方法を変えてごはんの物性(かたさなど)を計測し、実際に試食しながらデータを取っていきました。さらに、お米の銘柄ごとに最適な炊き分けも目指したため、炊き方のパターンは途方もなく膨大な数になりました。当社が考える硬度(30mg/L前後)の水で炊いた理想のごはんを指針とし、どの地域の水、どの銘柄のお米でもおいしいごはんになるように、地道な検証を繰り返していったのです。その結果、2022年以降の「水硬度炊き分け」機能を搭載した炊飯器では、液晶画面で水の硬度やお米の銘柄を設定するだけで、検証を重ねてようやく見つけ出した“おいしさ”を堪能していただけるようになりました。

特許技術

真空技術東芝独自の真空技術により
お米の芯まで吸水されます。

特許技術

水硬度炊き分け水の硬度に合わせた制御により
いつもの水で理想のおいしさを実現。

内釜全体を均一加熱して、おいしく炊き上げる
「 鍛造厚釜/
噴上げ回転対流 」

外回りの対流に内回りの対流をぶつける逆転の発想

インタビューイメージ

炊き上がったごはんのかたさ、粘り、甘みなどを計測し、加えて米・食味鑑定士の資格を持った技術者が人間の感覚でしか捉えられない風味を判定します。ごはんは粒単位、かたまりで分析し、内釜内の位置別でも評価します。その結果、内釜内の温度の上がり方に差があることで炊きムラが生じ、おいしさが損なわれることがわかりました。内釜を外側から加熱する構造は、どうしても中心部のお米への加熱が弱くなってしまいます。そこで通常、外側下部から高温になって上がり、内側に沈んでいく外回りの対流に加え、逆向きの内回りの対流を発生させることで、中心部のお米をより均一に加熱する工夫を行いました。

この対流の仕組みは、熱源であるIHコイルを、内釜の下部をぐるりと一周する外回りのIHコイルと、内回りのIHコイルの2系統に分け独立して作動させます。外回りIHコイルと内回りIHコイルの加熱を切り替えることで、水の対流も切り替わり、内釜内で均一に加熱が発生するようになります。1回の炊飯で熱対流の切り替えは100回以上。実際に対流によって生じるお米の動きを観察し、内釜内各部の温度を計測。お米以外にもそうめんを使って最適な対流の動きを検証しました。

IHコイルイメージ

大火力を支える独自技術の鍛造厚釜

鍛造厚釜イメージ

内釜の材質や形状も重要な要素のひとつで、当社の内釜は1994年から採用している鍛造厚釜が基本となっています。鍛造厚釜は大火力を支えるために開発したもので、熱伝導率の高いアルミニウム合金を使っているのが特徴です。全体はアルミニウムで構成されていますが、IHコイルのある下部は渦電流が流れて容易に発熱するステンレスにする必要があります。しかし、アルミニウムとステンレスは熱膨張率が異なるため、その境界にせん断力がかかり剥がれやすくなります。そこで、鉄を介在させながら金属の凝固過程で高圧力を加えて強固に結合させる溶湯鍛造の技術を用いることで、アルミニウムとステンレスの信頼性の高い結合を実現し、独自の内釜をつくり出すことができました。

鍛造厚釜の主な製造工程
内釜イメージ

また、効果的な回転対流を生み出すための形状にもこだわり、内釜の下部を60°の丸型にし、釜底の中心部には膨らみを設けています。釜底には波状の溝を設けることで底から噴き上げる気泡を増やし、熱を伝達させるようにしました。内釜は炊飯のたびに高温加熱され、使用後は冷却されます。さらに持ち運ばれ、水での洗浄が繰り返されることから、長期間にわたって加えられる熱ストレスと衝撃への耐久性が求められます。約半年間をかけて開発した鍛造厚釜は、さらに約1年にわたる耐久試験を経て信頼性が確認され、ついに量産化に成功しました。おいしさの秘密である大きな熱対流は、内釜の形状、IHコイルの位置、加熱の温度や切り替えのタイミングなど複合的な要素について妥協なく追求することで実現できたのです。

特許技術

交互対流内回り・外回りに回転方法を切り替える熱対流により、内釜全体を均一
に加熱し、ふっくらとした炊き上がりを実現します。

検証結果

内釜の温度の比較

熱対流が外回りしか発生していなかった従来機種では内釜の中心部の温度が外側に比べて低かったのに対し、内回り・外回りの熱対流を切り替えるRC-10ZWWでは中心部も高温になり、内釜全体が均一に加熱されています。

*対流の回転方向が外回りのみのRC-10ZWPかまど名人「おすすめ」コースで炊飯したごはんと、対流の回転方向を切り替えるRC-10ZWW匠炊き「ふつう」コースで炊飯したごはんの比較。令和4年度産コシヒカリ3合炊飯時。お米の銘柄・水の量等によって大きさは異なります。

お手入れのしやすさを向上する
「 すっきり内ぶた 」

お手入れのしやすさを追求し
調圧機構を一新

インタビューイメージ

炊飯器の使用感に関するお客様の声として、必ず上位に挙がるのがお手入れに関する要望です。なかでもふたの部品を分解して洗う手間が面倒だという声は多く寄せられていました。そこで、分解洗浄するのが当たり前になっていたふたの構造を根本的に見直し、分解の必要がないシンプルな形状を目指しました。

炊飯器は大きく内釜とその上部を覆うふたで構成されます。内釜内で発生した蒸気は内ぶたのどこかから放出しなければいけません。そのため一般的な炊飯器では、内ぶたの外側に蒸気口となる箱型の部品、内側には加圧・加熱をサポートするために補強板が付いています。これらの部品を正しく衛生的に作動させるためには、炊飯後に毎回、付着したお米の粘り成分をきれいに洗浄する必要があります。

そこで、調圧機構の考え方を変え、炊飯器の常識であった蒸気口部品をなくし、内ぶたに付いている調圧機構を本体へ移動させました。この大きな改良のポイントは、調圧機構をボール方式からバネ方式に一新したこと。調圧機構を本体に収めたことで、内ぶたはシンプルな形状になり、洗う必要のあるパーツを内釜と内ぶたの2点に減らすことができました。さらに使用部品点数と組み立て工数も削減でき、生産性も向上。お客様の使いやすさを徹底的に追求した結果、炊飯器はさらに大きく進化しました。

ボール方式の構造イメージ ばね方式の構造イメージ

使いやすさを向上する
「 カラータッチ液晶 」

ストレスのない直感的な操作で
細かな炊き分け機能もフル活用

カラータッチ液晶イメージ

操作性も使いやすさを大きく左右する要素です。当社の最上位機種は4.3インチカラータッチ液晶を搭載。炊飯器にカラータッチ液晶を採用するのは業界初です。液晶をカラーにすることで写真や絵の表現が豊かになり、格段に多くの情報を盛り込めるようになります。水硬度の設定、お米の銘柄、炊き方のコースの組み合わせは何万通りにもなりますが、取扱説明書を読まなくても、直感的な操作で自分に合った使い方ができるように設計しています。

仕様の自由度が極めて高いだけに、カラータッチ液晶でどこまで細かな操作を可能にするか、ストレスのない直感的な操作を実現できるかなど、仕様決めに苦労しました。数カ月に及ぶ議論と試行錯誤を重ねて仕様を決定し、プロトタイプができあがると、実際の使い勝手の検証と改良に1年弱の時間を要しました。また、従来の液晶とは異なる視認性への配慮やタッチのしやすさを確保するために、液晶の位置や角度もわずかな違いを実際に検証しながら精査していきました。高温になるふたに繊細な部品を搭載するのも難しかったポイントです。最終段階では、スマートフォンに慣れたお客様が違和感なく使えるようタッチ操作範囲の確保や反応速度のチューニングに大きな労力を要しました。

カラータッチ液晶を搭載した製品がリリースされると、大きな反響がありました。最上位機種であるにもかかわらず20〜30代の購入者が増え、しかも高い満足度が示されました。一方、年配者からは「使いこなせるか不安」という声が聞かれたものの、実機に触れてみると、ストレスのない直感的な操作ができることから、購入の決め手ともなる機能として高く評価されました。カラータッチ液晶は炊飯器の繊細な炊き分け機能を操作面から強化し、おいしさの向上に貢献しています。

*国内家庭用100Vジャー炊飯器において(2022年4月20日発売)

カラータッチ液晶イメージ
特許技術

カラータッチ液晶画面表示を切り替えて設定した多くの情報を、トップ画面上で認識できる4.3インチカラータッチ液晶を搭載

※CG画像、イラストは全てイメージです。

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